今日、地域独自の建築様式や技術が徐々に減っていき、全国どこでも変わらない建物が立ち並ぶようになりました。それは、
▷昭和25年の建築基準法の制定で、全国一律に建築の設計に関する基準ができたこと
▷自動車の普及により、大工などが広い移動範囲で仕事をするようになったこと
▷建築資材の大量生産、工場で機械が木材を加工するプレカット工法が普及したこと
などの様々な理由によります。
そのような中でも小浜西組は、災害や空襲などの被害が少なかったことや、家造りに携わる職人が現在まで、その技術を絶やすことなく継続していたため、独自の建築様式を残すことができた稀な地域です。
小浜西組は、古い街並みが地域独自の建築様式のまま残っています。
この土地の気候風土に合わせ、地域の職人によって、独自に進化してきた町家です。
間口が狭く、奥行きの長い「鰻の寝床」のような土地いっぱいに建てられた町家で、 表構えは2階に防火用の「袖壁」を備えています。
玄関には「跳ね上げ大戸」、ミセには「摺り上げ戸」と商品陳列用の「がったり」を設置し、ミセノマを全開放できる構造となっています。
離れまで続く土間「トオリニワ」、ナカノマには2階へ上がる「箱階段」、この全てが、伝統的な「小浜の町家」を構成する重要なパーツです。
国の重要伝統的建造物群保存地区(以下:重伝建地区)は全国で126地区、福井県内では今庄宿(南越前町)、熊川宿(若狭町)、小浜西組(小浜市)の3地区が選定されています(2021年8月現在)。
重伝建地区はその地域でしかない建物が群れとして残っており、歴史的に価値のある地区が選定されています。今庄宿と熊川宿は宿場町であり、風情ある建物が街道沿いに立ち並んでいます。
一方で小浜西組は、商家町や茶屋町・寺町(寺社仏閣)がミックスされた全国的にも珍しい地区です。空襲や津波なども無く、地割(敷地や道路など)は中世以降ほぼ変わっていないと言われており、明治・大正・昭和の建物が多く残ります。2008年に重伝建地区に選定されましたが、まちなみ保存活動をする以前から、地域住民はこの町家を修理しながら住み続けています。
また、当社の蔵や小浜町並み保存資料館には、先代達が残した大工道具や建具などが保存されており、一つひとつに当時の仕事や暮らしがうかがえます。
先代達が残した大工道具や建具
大工だけでは家は建ちません。左官や建具、瓦、板金、電気、水道など様々な職人がチームとなって一つの建物を作り上げていきます。
他の地域では様々な場所から職人が出入りしているのが一般的ですが、小浜西組では今でも歩いて行ける距離で重伝建(重要伝統的建造物)の改修に携わっている職人が集まっています。 いくつもの偶然と人々の営みがあって、小浜の町家は守られています。
地域独自の建築様式や技術